克のスペシャル柏日記(最終回) 2003.7.29
それは7月の中旬にしては異例に寒い日に起こった。
7月16日。
その日は昼ごろから大学の友人たちが家に遊びに来ていた。
大学生らしく皆でゲームなどをして楽しい時を過ごした。
その日もいつものように何事もなく一日が過ぎていくはずであった。
このときはまだ、まさかあの街であんなことが起こるとは予想すらできなかったのである。
午後6時頃になると、友人たちがぞろぞろと帰り始めた。
彼らが残したゴミを片付け、スーパーに行く準備を済ませると、携帯にメールが届いているのに気がついた。
古くからのネット友達である「カナ」からのものである。
その内容はこうだ。
『ごはんもう食べた?』
元々俺はあまりメールをしないのだが、そこはぶっきらぼうではあるが正直に、まだ食べていないことを伝えた。
すると次にこのようなメールが返ってきた。
『柏まで出てこん?いそがしい?』
柏・・・。
その土地の名を聞いたのはどれくらいぶりであろうか。
多くの人々が出会い、そして別れる街。
伝説の都市柏である。
驚きを隠せない俺はさらにこう返した。
『え!?今柏なの!?』
メールの内容をそっくりそのまま書くってのもなかなか恥ずかしいものだが、ここは我慢して書くことにしよう。
さらにカナはこう返してきた。
『ううん。船橋だよ』
いくら理系バカの俺でも彼女が言わんとしていることはわかる。
カナが柏の近くまで来たから会ってご飯でも一緒に食べないか、ということなのだろう。
さすがにこれ以上返事を先延ばしにするわけにもいかない。
この俺が、ただの友達であるとはいえ女性と二人で会うことなど出来るのか。
俺は選択を迫られた。
A.『わー。ちょっと遠いね。柏まででよければ行くよ。』
B.『船橋は遠いよ。無理してきてくれなくてもいいよ。俺もちょっと忙しいし。』