A.『わー。ちょっと遠いね。柏まででよければ行くよ。』


心を決め、俺はそう返した。
すかさずカナから返事がくる。

どうやらカナは電車を乗り間違えたらしく、それでも8時半には着くとのことだった。

現在の時刻7時50分。

そのときが来るまで約40分ある。
長いようで短い。
家から柏までにかかる時間はおよそ20分。
「およそ」という言葉を耳にしただけで円周率がおよそ3な文部科学省が憎くなるのは俺だけであろうか。
いいや、もはやそんなことを考えている時間は俺にはなかったのである。
俺は残された20分で、無作法に伸びたヒゲを剃らなくてはならなかった。

携帯をベッドに放り投げ、急いでヒゲを剃る。
かかった時間は10分。
これでカナは俺にヒゲが生えていたことなど想像もできないだろう。

すっきりさっぱりしたところで柏に向かった。
乗りなれたはずの電車がいつもとは違って見える。
これからあの街で何かが起こることを予感させる不気味さすらあった。
・・・ただ緊張しているだけだ。
俺は無理にでもそう思おうとした。



柏に着いたのは8時15分くらいだったと記憶している。
カナが来るまで少し時間がありそうだ。

余裕で間に合った。
ひとまず安心すると、新たな心配が俺を襲った。

食事ってどこでするんだろう・・・。

おそらくカナは柏の食事情など何も知らないだろう。
かといって俺の知識を辿ってみても、マクドナルドと吉野家くらいしか出てこない。

これはまずい。
ぼく、まずいとおもう。

俺は急いで駅を離れ、ファミレスでもなんでもいいから店を探すことにした。
ファミレスがあった。
聞いたことのない名前ではあったが充分だろう。

あとは駅でカナを待つのみ。
そんなとき再びカナからメールが届いた。





『うわー また間違えたよ すいませんゆっくり来てください』











この人すごいなぁ。
と思った。


仕方ないので俺は時間をつぶすためにCD屋にでも行くことにした。

視聴コーナーで何か聴いていればすぐ時間も過ぎるだろう。
そう考えた俺は・・・







A.大人なところ示そうとジャズのコーナーへと足を運んだ。
B.流行の曲をチェックすべくJPOPのコーナーに向かった。