克の帰ってきたよ千葉県に日記(最終回) 2002.3.12

今日、約一ヶ月間の実家での生活を終えて千葉へ帰ることにした。
ほんとは今13日だけど、12日のふりして書くことにしよう。
今日の昼飯はうまかったなぁ。何食べたっけなァ。


地元から千葉の家へは、約5時間電車に揺られて帰ることになる。
長い電車の旅。

1ヶ月実家で快適に過ごしたということは、1ヶ月の間部屋を空けていたことに等しい。
いつもこの長い旅路の途中で懸念するのは千葉の部屋の様子である。
『泥棒に入られてないかなー』とか『急を要する手紙が届いてないかなー』とか、そういう心配は全くしていない。

俺が危惧するのは奴の存在だけである。
そう。
奴の名は『ゴ○○○』

人間の歴史など無視できるほどに大昔から地球に存在する奴ら。
大きさ、色、形、奴らの中にも様々な種類があるが、どれも見た瞬間奴だとわかるグロテスクぶりを遺憾なく発揮している。
その体内にはサルモネラ菌をはじめとする多種多様な菌が住み着き、我ら人間を恐怖のどん底へと突き落とす。

1匹や2匹なら俺も人間の代表として奴と戦う覚悟は出来ている。
たしかフマキラーは玄関先に置いておいた。
そいつを奴に向かって発射すればいとも簡単に勝利を手にすることができるであろう。

しかし、奴らが大量に発生していたらどうか。
ドアを開けた途端に聞こえる奴らのざわざわと動きまわる音。
突然ドアが開いたことに驚き、飛びはじめる者もいるかもしれない。
足の踏み場も無いほどに奴らで埋め尽くされていたら・・・。

俺はそんなことを考えながら5時間、電車に乗っているのである。


午後9時を少しまわった頃。
俺は部屋のドアの前に着いた。

耳を澄ますが何も聞こえない。
見慣れたドアが、今日だけは竜王の待つ大城の門のように感じられる。

俺は勇気を振り絞ってカギをまわし、部屋に入った。

暗く静まり返った室内。

電気を付けると、どうやら奴の大量発生は防げたらしいことがわかる。

しかし油断してはならない。
もともと奴らは隠れることを最も得意としているのだ。

奴らが現れるのは食べ物のある場所であることが多い。
帰省するときに片付けたはずの流しに目をやる20歳の若き青年克。
克はそこを見た瞬間、奴との戦いが避けられたことを知った。
しかし、克は同時に新たな強敵と対峙してしまったのである。

流しに置かれていたのはカップラーメンのトレイ。
中には帰省直前に食したと思われるスープが少し残っており、そこにはオビタダシイ量のカビが!!!!!
なんか変な匂いがするとは思っていた。

なんでこれだけ片付けて帰省しなかったんだ俺は・・・。

急いでそれをそっと持ち上げ、スーパーの袋に入れ、ゴミ捨て場に走った。


勝った・・・!

俺は全ての敵を倒し、さっき買って来たばかりのコンビニ弁当を食べることにした。
まだ部屋はカビ臭いけど、すぐ消えるだろう。


しかし、その俺の予想は覆されることになる。
数時間経っても匂いが消えない。
匂いの元であるカビは、トレイごとゴミ捨て場に葬ったはず。

まだどこかにカビが・・・。

太古の昔から、人間は『見えないこと』や『わからないこと』など、知覚しきれないものに恐怖を抱いてきた。
それらの恐怖は幽霊やUFOなどの空想の産物を生み出し、今でもそれらは根強く残っている。
このことは、科学が進歩した現代においても、その恐怖が生き残っていることを示している。


家中探すが見当たらない。
俺にできるのは、明日には匂いが晴れていることを願って風呂に入って寝ることのみ。


お休みみんな・・・。
俺は決してカビなんかには負けない。
そう・・・、明日は清清しい気分で目覚められるのだから(タブン)。












※結果が気になる人は克に直接聞いてみよう。無視するから。