克の怪談日記(最終回) 2002.8.16
「エアコンまだ直ってないの?」
という質問を受けたので、そのことについて今日はお話したいと思います。
読者のみなさんに少しでも涼しく感じていただけるように怪談調でね・・・。ヒヒヒ。
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これは本当にあったお話・・・。
あれは前期試験の最中だったから、7月の半ば頃でしょうか。
俺は毎日のうだるような室内の暑さに耐えかねていました。
というのも、半月ほど前からエアコンの調子がなぜか悪かったのです。
あいにく俺は機械に詳しくないので、どれほどの頻度でエアコンが壊れるのか分からなかったのですが、理由もなく突然壊れたエアコンに多少なりとも不気味な印象を覚えていたのでした。
ある日、我慢ができなくなった俺は大家さんに電話をかけたのです。
プルルルル・・・・
ガチャ
電話の声「はい・・・」
すると電話の向こうからは聞きなれない女性の声が聞こえてくるではありませんか。
そう・・・。
まるで何かを俺に訴えかけるかのように・・・!!!
電話の声「○○ですが」
・・・どうやら大家さんの奥さんのようだ。
俺の思い過ごしだったのだろうか・・?
俺は高鳴る鼓動を押さえつつ、エアコンが壊れたことと、修理してほしいことを伝えました。
すると彼女は故障状況を詳しく聞かせてくれと返しました。
電気屋さんには俺が直接ではなくて、大家さんのほうから電話するそうなので、なるべく詳しく教えてほしいとのことです。
俺は冷房をつけても涼しい風が出てこないこと、ランプの点灯のしかたがおかしいこと、この2点をかいつまんで話しました。
そのときです。
彼女はこの世の者とは思えない発言を繰り出したのです。
大家さんの奥さん「暖房つけてみてもらえますか?」
俺は戦慄した。
この暑いのに暖房を付けろというその言葉に恐怖した。
なんとかその場をやり過ごし、俺は電気屋が来るのを待つことになった。
数日後、俺は再び恐怖に身を凍らせることになる。
ある日何の前触れもなく突然電話がけたたましく鳴り響いたのだ。
べっとりとかいた汗がTシャツと俺の背中を密着させる。
それが逆に冷たく感じられるほど俺の体はこわばっていたのだ。
生唾を飲み込み電話を取る。
そのとき俺は気付いてしまった。
俺は自分が受話器を落としてしまわなかったのが不思議だった。
なんとその電話には電話線が繋がっていなかったのだ・・・!
携帯だからね。
あとTシャツのは嘘だ。
すまない。
部屋の中では服なんて着ないのだ。
ヘヘン
いやそうじゃない。
本当に恐ろしいのはここからだったのだ。
その電話は大家さんからのもので、午後5時頃に電気屋さんが訪れるであろうという予言めいた内容だった。
そして俺をあざ笑うかのようにその予言は的中し、電気屋さんが5時にやってきたのだ。
何事もなかったかのような顔でニヤニヤ笑いながら、彼らは作業をはじめた。
1時間ほど経っただろうか。
修理作業はまだ終わらない。
なにかおかしくないだろうか。
本当にエアコンを修理するだけでこんなに時間がかかるものなのだろうか。
俺の心配をよそに作業は続く。
だんだんと俺を睡魔が襲い始めた。
寝てはいけない。
ここで寝てしまうと、二度と起きることのない眠りに入ってしまうような気がしたのだ。
しばらく耐えていると、どうやら作業が終わったらしく電気屋さんが片付けを始めた。
そこで俺は恐る恐るこう言ってみた。
克「ありがとうございました。」
電気屋「ありがとうございます。」
Σ(・□・ ;)!!!!!!!
俺は20年間の間、何度も『ありがとございました』を言ってきた。
いや、普通の人よりはちょっと少ないかもしれないが、それでも多くの『ありがとうございました』を生み出してきた。
だがその『ありがとうございました』に『ありがとうございます』と返されたのは初めてだ。
俺は恐怖の源である電気屋が早く帰ることを願った。
しかし電気屋の無言の片付けは思ったより長引いている。
間が持たない・・・。
思わず俺はこう言った。
克「ありがとうございました」
電気屋「ありがとうございます」
はは。
こりゃおもしれーや
電気屋が玄関から出て行こうとしているときにもう一度言ってやった。
克「ありがとうございました」
電気屋「ありがとうございます」
アハハ。
面白い人だなァ。
楽しい電気屋さんでよかった。
俺は正しく動くエアコンを見上げ微笑むのだった。
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というわけで今は快適な冷房生活を送っています。
少しでも涼しい気分になっていただけたでしょうか。
俺はもう冷房があるので、そんな必要は無いのですけどね。フフ。