克の自転車日記(最終回) 2002.10.24

高3のときから愛用してる自転車があります。
かつて「マッハ」と名付けたそれは今でも俺の良き相棒です。

当時『パンクレスタイヤ』を売りにして店頭に並んでいたマッハですが、4度もパンクしたことのある可愛い奴です。


車の免許を取るお金も時間も必要も無い俺にとってはこれからもずっと相棒でいてほしかったのですが、先日俺とマッハを襲う悲劇がありました。




少し寝坊して学校に遅れそうになった俺は、マッハと一緒に学校へと急いでいました。
構内まで無事到着したところで時計を確認します。

克『よし、間に合いそうだな。』

うちの大学のキャンパスは無駄に広いので、アスファルトの道をしばらくマッハで行かなくてはなりません。

俺が颯爽(さっそうて読むんだよ)と走っていると、突然どでかいトラックが左折してきました。
急に目の前に現れたトラックに多少なりとも驚いた俺でしたが、そこはさすがクールな克。
慌てず騒がず、落ち着いて避けようと左のブレーキをかけてスピードを落とし左に曲がることにしました。


克『頼むぜマッハ。お前の後輪は俺が抑えてやるからトラックぐらい余裕で避けてやろうぜ。』


もう4年もの付き合いになるマッハに語りかけ、俺は左のブレーキをぐいっと握りました。






















ブチンッ!!


















俺は一瞬何が起きたかわかりませんでした。
わかったのはスピードが緩まっていないことと、大きな音がしたということ。

余裕で避けるはずだったトラックをとても不恰好に避けた後、ゆっくり校舎に向かいつつマッハの様子を確認しました。

見るとなんとマッハの左ブレーキから繋がっていたワイヤーみたいのが綺麗に切断されているではありませんか。
これではこれから先、左ブレーキを使うことができません。


参ったな・・・寿命だったんだろうな。
修理しようかなどうしようかな・・・。


俺が困っていると、マッハが俺に語りかけてきました。






マッハ『克。あんたにブレーキなんて似合わないぜ』







涼やかでよく通る声でした。


克『そうだよな。俺が間違っていたよマッハ。』


ブレーキのワイヤーが切れようとも俺とマッハの信頼の糸は決して切れません。
俺は心をほかほかさせながら授業に出席しました。










そしてこれは今日の話。

いつも通りマッハにまたがって登校していました。
今朝は雨が降っていたので傘を差しながらの運転です。

それでマッハよ。
右手に傘を持った俺はどうやってお前の走りを止めればいいんだい?

マッハ『あんたにブレーキなんて似合わ・・・』

やかましー!!!!