克のバトル日記(最終回) 2002.4.8

俺には行き着けのスーパーがあるのですが、もう行かない日はないほど毎日通っているので
レジの人の顔などは嫌でも覚えてしまいます。


顔見知りのレジの人をしばらく見ないときは
「あの人は辞めちゃったんだな」
と思うことができたりします。

また、新しい人が入ったときは『実習生』の札を見なくても
「あ。新人さんだ」
と思うことが出来ます。



Tさんもついこのあいだ入ったばかりの新人さんです。

Tさんは俺と同じか少し年下と思われる女性なのですが、ちょっとほんわかした雰囲気の人なのです。
(店員さんは胸に名札をつけているためすぐに名前がわかるのだ)
ほんわかというかおっとりというか・・・。
言ってしまえばトロい感じかな。


惣菜コーナーには2コで150円のおにぎりが置いてあることがよくあり、夕方になってそれらに半額シールが貼られると2個で75円という破格の値段になるのです。
ただし、1コだけ買った場合は通常は100円、半額で50円というぐあいになります。


以前、半額になったそのおにぎりを1コ買おうとレジに持っていったことがありました。
そのときレジを担当したのが新人のTさんで、それが俺とTさんの初対面でした。

大抵の人は2つセットにしておにぎりを購入するらしく、Tさんは初めて単独で持ってこられたおにぎりに困惑しているようでした。
一度ピッてやったのはいいものの、半額にするボタンを押すとレジは「ピー--!」と文句を言う。
急いでその音を消し、今度は一般の惣菜のボタンを押すTさん。
今度はうまくいったらしく、『100円の惣菜が半額になって50円』という処理ができたようでした。

しかし、俺は異変に気付いていました。
ピー--!という音を消したのはいいけど、その前に読み込んだ『おにぎり100円』を取り消してないよ!!!!
Tさん!!!!

文句を言おうかとも思ったのですが、胸に輝く『実習生』と書かれた札が無言で俺を諭します。
一生懸命がんばるTさんの顔を立て、結局その日は150円でおにぎりを買うはめになったのでした。





そして今日、惣菜コーナーで再びお買い得おにぎりを発見しました。

今度は間違われないようにと、ツナマヨと梅の2つをカゴに入れる克。
それらは明日の朝ご飯にすることにして、夕飯に食べるものもいくつかカゴに入れ、レジへと向かいました。

一番空いているところ、というか、誰も並んでいないところがあったのでそのレジで精算してもらうことに。

カゴを台の上に乗せ、ふと顔を見上げると、なんとそこはTさんが担当するレジ。

また間違うのでは・・・
と懸念しなくもなかったのですが、今日はちゃんと2つセットにしておにぎりを買っています。
それにTさんもここ数日で少しは慣れてきているはず。

まだ『実習生』の札が取れないTさんを信じて、俺は待っていました。

おにぎり以外の商品をスムーズに処理していくTさん。
・・・と言いたいところですが、ちょっと遅い。

まぁ間違わずにやってくれるなら遅くてもいいや。
と俺が思っていたそのときです。

俺はハルマゲドンを目の当たりにしたのです。








Tさん:  おにぎりを1つ持って、一般の惣菜ボタンをピッ

表示:  [ 惣菜 100円 ]

Tさん:  半額ボタンをピッ

表示:  [ 割引 50円 ]

Tさん:  もう一つのおにぎりを持ってピッピッ

表示:  [ おにぎり 2コ 150円 ]


俺(え・・・・?)

Tさん「695円になります」







・・・言おう。
今日こそ言おう。
彼女が犯した過ちを彼女に言おう。
負けるな克。恥じるな克。
ここは俺のためにもTさんのためにも言おう!!




必死で接客をするおっとりTさん。





言えない・・・。
言えるわけない・・・。
あのTさんにそんなひどいこと言えるわけがない・・・。


125円とTさんの笑顔。
天秤にかけるまでもありませんでした。



負けたよTさん・・・。
今日も俺の負けだ。

だが、次は・・・
次こそは絶対に言うぞ・・・!!












現在の対戦成績 : Tさんの225円勝ち