克のバス日記(最終回) 2006.5.23

眠れなくて体を起こした。
あたりはまだ暗いので時計をみた。
時計の長い針が夜中を指し、短い針が夜中を指していた。

部屋を出て自転車を暗がりからごとごとと引きずり出す。
俺はそれにまたがるとゆっくりと漕ぎ出した。
町は青く静まりかえり、人の影をみつけることはできなかった。
ゆっくりと漕ぎ出した自転車は速度を上げることなく俺をいつもの交差点へと運ぶ。
ここでは直進するか右折するかどちらかしかしたことがないが、
夜が俺と自転車を交差点の左へと動かした。

人だかりが見えた。
皆そろって黄色いはっぴを着、旗に囲まれた人物のほうを向いていた。
どうやら中心にいる人物は政治家らしい。
人だかりが低い声を中心に投げ出したので、漏れた音が俺の耳にも届いた。
俺は少しわずらわしかったので、自転車を止めて近くのコンビニに入った。

中はずいぶんすっきりとしており、店内の中央に台があるだけで、他にはレジと店員が いるだけであった。
台の上にはパンや弁当のようなものがいくつか陳列され、各々の前に値段が書いた札が置いてあった。
パン1つが1000円くらいしたので
「やはり政治家がいるようなところは高いなぁ」
と思い、何も買わずに外へ出た。

外ではさっきの黄色い政治集団が真っ暗な街道を行進していたので、
俺はより早くその場を離れるために自転車を置いてそのバスに乗りこんだ。