克のチャーハン日記(最終回) 2005.1.28

そうまでして男はチャーハンが食べたいのであった。
次の角を曲がれば目の前にチャーハンがあるのではないか。
どんなに叶う可能性が少なくとも、男はわずかな希望を持たずにはいられなかった。

いったいいくつの曲がり角を迎えればよいのだろう。
男がチャーハンのこと以外で考えるのはゴールのことだけであった。
すでに数え切れぬほどの曲がり角が彼と出会い、別れた。

いつになればこの目的の無い迷路から抜け出せるのだろうか。

いいや、目的は2つもある。
あるとは考えにくいチャーハンと、あるかどうかわからないゴールだ。

白い壁が男を囲む。
床も天井も壁と同じく白い。
壁や天井はベニヤ板のような薄さかもしれないし、永遠と奥へ続くような壮大のものであるかもしれなかった。

恐怖はなかった。
彼の頭はチャーハンでいっぱいなのだから。


案外、壁はティッシュのように薄く脆く、それを破った先には美味しいチャーハンで有名な優しげな村があるのかもしれない。
彼がそのようなことを考えられるのか、考えたとしても実際に壁を破ろうと試みるのか、俺は知らない。