克のチーズバーガー日記(最終回) 2003.2.13
あるところにとても貧しい親子がいました。
病気の母と幼い少年はぼろぼろの家に二人だけで住み、ぼろぼろの服を身にまとっていました。
収入もなく、その日その日を生きていくのがやっとの生活が長く続いています。
母は無邪気に笑う息子の顔を見ると涙が止まらないのでした。
ある冬の日、いつもは何の不満も言わない少年が母に言いました。
「ぼく、マクドナルドのチーズバーガーを食べてみたいな」
窓の外を見ると、美味しそうにチーズバーガーを食べる高校生たちが歩いています。
「とっても美味しいらしいよ。ママとはんぶんこして食べたいな。」
そう言ったあと、少年は申し訳なさそうに謝りました。
その姿はいとおしく、せつなく、寂しいものでした。
「ごめんね・・・ぼうや。」
「なんで泣くの?ママ。泣かないで。」
次の日から母は病気の身を押して働きました。
そしてようやく85円を稼ぐことができました。
「ぼうや、チーズバーガーを食べに行くわよ」
「ほんと!?でもママ、体は大丈夫なの?」
「だいじょうぶ。チーズバーガーを食べればこんな病気すぐに治るわ」
「わーい!やったー!」
「でもごめんね。ママ、1つしか買ってあげられないの」
「1つでいいよ!ママとはんぶんこして食べられるもん!」
「うふふ。そうね。」
2人は微笑みながら店内に入りました。
「なんじゃあこりゃあああああ!!!!」
「お、落ち着いてママ・・・」
「・・・ごめんねぼうや。ママが若い頃に一度だけ来たときは79円だったの」
「ううん。ぼくは平気だよ。でもママの病気が・・・」
2人が悲しみに打ちひしがれていると、後ろから賢そうな青年が母子に声をかけてきました。
「ハンバーガーを買うといいですよ。59円ですから」
「でもチーズが・・・チーズが・・・」
母が搾り出すように言うと、青年は懐からスライスチーズを1枚取り出しました。
「坊や、これでお母さんにチーズバーガーを作ってあげなさい」
少年の顔はぱぁーっと明るくなりました。
「うん!ありがとうお兄ちゃん!」
倒れこんでいる母からお金を受け取った少年は、そのお金でハンバーガーを買い、それにチーズをはさみました。
「ほら、ママ食べて。チーズバーガーだよ」
「ありがとう・・・ぼうや・・・」
「はい、はんぶんこ」
「美味しいよ。ぼうや、本当に美味しい。」
「うん!美味しいね」
母は涙を浮かべながらチーズバーガーをゆっくりと食べました。
「あ、そうだ。お兄ちゃんにもっとお礼を言わなきゃ」
チーズバーガーを食べ終えた少年がふりかえると、もうそこに青年の姿はありませんでした。
それでも少年はこう叫びます。
「お兄ちゃん!本当にありがとう!」
その後チーズバーガーを食べた母の体はすっかりよくなり、また2人は巨万の富を手に入れることができました。
少年はもりもり勉強して立派な数学者になり、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。